卵巣の腫瘍
卵巣の腫瘍
卵巣は子宮の左右にある2~3㎝程度の臓器です。卵子を排卵する、女性ホルモンを分泌するという、いわゆる女性らしさの源をつかさどる臓器です。この部位に発生する腫瘍を卵巣腫瘍と言います。卵巣腫瘍は良性の腫瘍と悪性腫瘍があり、その内容も様々です。超音波や腫瘍マーカーで何に分類されるかを推定します。最終的な診断は、実際に組織を採取して顕微鏡で確認する組織検査となります。とはいえ卵巣腫瘍をすべて手術して検査をすることは現実的ではありません。良性腫瘍の可能性が高い場合は定期的に観察しますが、増大傾向があるときや、検査結果から悪性が否定できないときは精密検査を行います。また診断と治療を兼ねて手術をすることがあります。
悪性腫瘍を疑うときは、高次医療施設でMRIなどの精密検査を受けます。その結果で悪性腫瘍の可能性が高い場合は手術となります。卵巣腫瘍にはあまり症状がないことが多いです。たまたま検診などで見つかることもあります。また増大すると周りの臓器を圧迫して便秘や腹満感、頻尿などの症状が出てくることがあります。場合によっては、後述しますが茎捻転や、破裂をおこして突然激しい痛みが出現することがあります。
非腫瘍性嚢胞
卵巣は月経周期によってさまざまな変化を見せます。排卵後に卵巣内に血液が貯留した出血性黄体嚢胞や、漿液性分が貯留した機能性嚢胞があります。これらは自然吸収されて消失します。卵巣周囲から発生する傍卵巣嚢胞や卵管水腫などの非腫瘍性病変も存在します。これらはいずれも経過観察となります。
腫瘍性病変
内容物がサラサラとした体液のものを漿液性嚢胞、粘液が含まれる粘液性腫瘍、毛髪や脂肪、骨などが含まれる成熟奇形腫などに分類されます。超音波でいずれに分類されるか推定し、必要があれば腫瘍マーカーやMRIで腫瘍の良悪性やその性状を判断します。良性腫瘍の場合は、小さなものは経過観察とします。増大傾向があるような場合は手術を考えます。5~6cmを超えるものは、茎捻転を起こすことがあるので手術となります。
卵巣腫瘍の茎捻転
卵巣は靱帯で子宮や骨盤とつながっていますが、そこがねじれてしまうことがあります。特に卵巣嚢腫が5~6cmを超えるとリスクが高くなると言われています。茎捻転を起こすと激しい痛みが起こります。加えて卵巣の血流が遮断されるため放置すると卵巣や卵管が壊死をしてしまいます。血流が遮断される時間が長いほど卵巣が壊死を起こす可能性が高くなるので、早期の手術が必要です。一般的に手術は術前検査をして予定をたてて行う方が、緊急でするよりも安全です。加えて健康な卵巣の部分を温存できる可能性が高くなります。このため良性であっても5~6cmを超えると手術をお勧めします。
悪性の卵巣腫瘍を疑う場合は、腫瘍マーカーやMRIで腫瘍の性状を判断します。悪性を疑う場合は、CTで他臓器に転移や浸潤がないかを診断します。これによって推定される腫瘍の性状、進行度を判断します。治療は進行度や妊娠の希望の有無によって変わります。手術で腫瘍の性状や悪性度、進行度を判断し、必要な場合は術後に化学療法などが必要となることがあります。
子宮内膜症は疼痛と不妊を特徴とするエストロゲン依存性の慢性の炎症性疾患です。初経後に進行性に病巣が形成されます。病変は子宮や卵巣以外にも骨盤腹膜や卵巣、およびダグラス窩(子宮と直腸の間)に発生します。卵巣にできたものを内膜症性嚢胞やチョコレート嚢胞と呼びます。エストロゲンの影響下で病変が増大するので、月経ごとに増悪し、閉経するまで進行する可能性があります。また大きなものはがん化のリスクがありますので、定期的な経過観察が必要です。
月経痛、月経時以外の痛み、性交時痛、排便時痛、不妊症など様々な症状があります。また破裂を起こして内容物が骨盤内に排出され、強い痛みを引き起こすことがあります。月経痛がある女性はない女性に比較して約2.6倍、内膜症になりやすいと言われています。
超音波で腫瘍の有無を確認し、双合診で周囲の癒着や痛みを確認します。必要があればMRIなどで周辺臓器の状態を確認します。
エストロゲンの影響で増大する病気ですが、一方でプロゲステロンが増大を抑制します。エストロゲンとプロゲステロンの合剤である低用量ピルや、プロゲステロンの単剤であるディナゲストの継続投与で治療をおこないます。低用量ピルやディナゲストのみでスムーズに症状が改善しない場合は偽閉経療法を行い、病変の縮小を狙います。
内膜症性嚢胞が大きくてがん化のリスクがあると判断したときや、上記治療で症状が改善しない場合は手術で病変を摘出します。妊娠の希望があるときはまず低用量ピルやディナゲストを中止して妊娠を試みます。妊娠に至らず、子宮内膜症が不妊の原因の可能性があるときは手術も考慮します。治療は年齢、症状、妊娠希望の有無などで選択肢が変わります。細かく症状や希望をうかがって、治療方針を決定します。
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